【イベントレポート】第7回業界マップ部会「生成AI」

2024.05.21UP

第7回業界マップ部会「生成AI」のカテゴリーで開催されました。今回ご登壇して頂いた企業は、株式会社GOGEN、株式会社ライフル、パレットクラウド株式会社の3社です。前半は各社製品・サービスのご紹介をしていただき、後半はパネルディスカッションを実施いたしました。

 

第一部 製品・サービスのご紹介

 

GOGEN株式会社 和田様

 

現在、GOGENでは大きく3つの事業軸、不動産売買DX事業、コンサルティング事業、管理人DX事業があります。SaaSやコンサルティング支援などでもAIの活用が増えています。

不動産売買DX事業では「レリーズプラットフォーム」を提供しています。サービスとしては、不動産会社と顧客間のさまざまな手続きや電子契約、書類の送付などを、従来の郵送ではなくマイページで行えるツールを提供しています。
現在は、不動産会社と顧客間の契約書送付やスケジュール共有などが主流ですが、今年中には倉庫会社なども巻き込み、火災保険の手続きなどもオンラインで完結できるよう取り組んでいます。賃貸市場ではこうした取り組みが増えていますが、売買市場ではまだまだ少ない状況です。生成AIの活用も進めており、契約のプラットフォームを開発中です。以前は情報収集が困難でしたが、今はOCRで文字を取り込み、生成AIで情報を正規化することが可能です。不動産取引では通常使用されないプロパティもありますが、それらを含めた書面をAIで読み取り、申し込み作業につなげる取り組みを行っています。

また、コンサルティング支援では、不動産デベロッパーを中心に新築マンション販売の接客内容の分析や重要事項説明書の作成などをサポートしています。商談分析や従業員のロールプレイなども行い、売買の取引ごとの管理レベルを向上させています。
管理業界では人手不足や外国人対応などが課題です。チャットボットは以前から存在しましたが、シナリオ作成に時間がかかることがありました。生成AIを使えば、過去の傾向から回答を作成し、即座に提供することができます。「チャット管理人」では、AIに質問することで管理に関するあらゆる情報が得られます。顧客が住んでいるマンションのアカウントと友達になることで、疑問を解決できる仕組みも提供しています。

今後は、AIを活用した管理の領域を強化し、実際の顧客に展開し、満足のいく回答を提供していきます。管理業界では、画像からの問い合わせ判別やリアルタイムでの駐車場空き情報提供なども進めており、人と人のコミュニケーションを大幅に向上させることができると期待しています。このようなAIを活用した管理の取り組みは、弊社の重点項目の一つであり、今後本格的な導入を進めていく予定です。

 

株式会社LIFULL 山崎様

 

生成AIの取り組みは2022年から始まり、自然言語処理の研究開発はそれ以前から行ってきました。長らくAIに関する取り組みを行ってきましたが、2022年6月にチャットGPTがオープンAI社から発表され、技術業界に激震が走りました。22年12月には世間一般に認知が広がり、GPTのプラグインなどが登場し、生成AIの戦国時代に突入しました。この時代に多くの企業やスタートアップが生成AIに関わる専門組織を立ち上げ、弊社も生成AIに関する取り組みを本格的に行うために新しい組織を発足しました。

まずは一般向けの生成AIのサービスをリリースし、23年4月にはラインAIホームズくんを、6月にはライフルホームズチャットGPTのプラグインをリリースしました。その後、23年8月にはToB向けの独自チャットUIを施した接客サポートAIをリリースし、第四弾として野村不動産ソリューションズ様と共同開発したAIアンサープラスをリリースしました。
これらのサービスは、不動産探しの体験を新しくするために自然言語を軸にした生成AIを活用したサービス開発を行っています。

次に、関連事例と成果のご紹介です。弊社では、不動産DXパートナーシップを通じて、ハウスコム様と野村不動産ソリューション様との協力関係を築き、生成AIを活用したサービスや新しいツールの開発、研究を行っています。ハウスコム様では、社内情報向けの検索システムやメール生成のシステムを提供し、野村不動産ソリューションズ様では、AI ANSWER Plus の開発を含む新しいサービスや業務効率化に向けたツールを共同で進めています。また、DXに関する社員のリスキリングや教育啓蒙活動も行っています。

国交省が提供する不動産情報ライブラリーを活用し、生成AIと組み合わせて、住所から得られるデータを分析して該当地域の周辺施設や価格情報を取得しました。この取り組みは業界で注目を集め、国交省とのコミュニケーションを通じてAPIの活用可能性について議論しています。社内でも生成AIの活用が進み、業務時間の削減など成果も出ています。技術の進化に追いつき、より良い体験を生み出すために積極的な取り組みが重要です。

このような取り組みは、外部へのプロジェクトだけでなく、社内でのリテラシー向上にも役立っています。不動産DXパートナーなど、さまざまな支援も加速しています。技術の進化は速く、常に新しいものが出ていますが、その内容についてキャッチアップし、より良い体験を生み出すために積極的に取り組む姿勢が重要だと感じています。

 

パレットクラウド株式会社 城野様

 

当社は個社専用の入居者アプリ 「パレット 管理」をクラウド入居者管理システムとしてSaaS形式で提供しており、2017年からこの業界に参入し、老舗としての地位を築いています。主な顧客は賃貸管理会社様で、入居者とのコミュニケーションプラットフォームとして、業務効率化と入居者満足度向上を支援するサービスを提供しています。

当サービスの特徴として、入居時のチェックやお問い合わせ、アンケート配信、ごみカレンダーなど、幅広い機能が提供されており、これらをニーズに合わせて組み合わせることが可能です。導入実績としては、大東建託様や大手の管理会社様に導入いただいており、戸数規模では業界トップクラスと自負しています。

当社のAI開発についてご紹介します。当社では以前より自社開発のAIモデルによる回答サポート機能の開発に取り組んでいましたが、自社開発からGPTに切り替えたことで劇的な進化を遂げ、昨年、AI回答サポートを正式リリースしました。現在もAI翻訳機能、チャットボットなどの開発を進めています。
本日はその他のサービス領域以外でのAI活用の取り組みについてご紹介したいと思います。具体的な事例を三つご紹介します。

  1. 1. AI回答サポートの導入事例

  当社SaaSのサービスに実装したAI回答サポートは、FAQデータを元に入居者の質問にボタン一つで回答案を生成する仕組みです。RAGRetrieval-Augmented Generation)という技術により、FAQデータにある質問については、精度が高い回答を生成する事が可能です。これにより業務時間の削減や回答の質の向上が期待され、好評を得ています。

  1. 2. ナレッジ管理チャットボットの事例

こちらは、業務マニュアル等の社内ナレッジを回答できるAIチャットボットを開発した事例です。1と同じくRAGにより、業務マニュアル内のデータに対して、質問に対する回答を生成するものですが、違いは、データが大量ということと、PDFHTMLといった非構造データを扱っている点です。普通に実装すると、精度の問題により使い物になりませんが、様々な工夫により、回答精度の向上を行っております。これにより業務時間の削減や新人教育などに貢献しています。

  1. 3. 音声データ解析サービスの事例

こちらはコールセンターの業務委託を行っている企業に向けたサービス開発事例です。こちらの企業様は、電話対応の内容をまとめ顧客に報告する業務が課題でした。当社の音声データ解析サービスを導入し、音声データから自動で文字起こしや要約(報告書フォーマットのテキスト生成)を行う機能を提供しました。これにより業務時間の削減や報告書の品質向上が実現し、大規模にご活用いただいています。

以上が当社のサービス及びAI開発に関するご紹介となります。

 

第2部 パネルディスカッション 

お客様の問い合わせや市場の動向など、過去1年間の変化についてお聞きしたいです。お客様の変化についていかがでしょうか。

和田氏)
昨年はAIにある程度の興味を持っていたのは業界トップ10レベルの企業のみでしたが、直近はトップ30~50ぐらいまでの企業が注目しているように思えます。昨年はブームがあった一方で、チャットGPTにアクセスすることが禁止されている企業も多く、Azureなどで環境を構築する取り組みが行われていました。一方で、皆ただそれだけでは何もできないことが分かってきたという感覚です。エンドユーザー向けの価値を提供することが重要であるという意識が高まっています。社内向けよりも社内外に力を注ぐことが効果的だと感じられます。

山崎氏)
一年前、2022年にGPTが登場した時は、法的リスクや虚偽情報の問題がありましたが、アーリーアダプターや大企業が集中的に利用する状況でした。その後の半年間を振り返ると、マルチモーダルな可能性や様々なLLMモデル、動画生成技術の発展が目立ちました。しかし、他の面では技術の進展は緩やかでした。2024年夏にはGPT-5のモデルファイブが出るという噂があり、新たな技術革新が期待されています。推論力やマルチモーダル化において、より高度で精度の高いものが登場することが予想され、業界は大きく変化する可能性があるとみております。━生成AIの分野ではバーチャルステージングなどの新しいビジネスモデルの検討が必要とされていますが、日本ではオペレーションの効率化だけにフォーカスされているのが現状です。AI活用のビジネス可能性について、簡潔に一言ずつ述べていただければありがたいです。

城野氏)
当社は大手の管理会社がお客様ということで、徐々にAIの認識が進んでいるという感触です。あるお客様は、最初はAIの存在が不明瞭なものと感じられたようで、社内での利用が制限された状況でした。最近は、方針が固まりつつあり、AzureAWSなどの選択肢が出てきています。利用に向けて進展していると感じています。

 

━生成AIの分野ではバーチャルステージングなどの新しいビジネスモデルの検討が必要とされていますが、日本ではオペレーションの効率化だけにフォーカスされているのが現状です。AI活用のビジネス可能性について、簡潔に一言ずつ述べていただければありがたいです。

和田氏)
そうですね。難しい部分ですね。大規模な開発にはかなりの資金が必要ですが、本質的な取り組みがどこまで可能かは高いハードルがあります。しかし、日本でもVRなどに取り組んでいる会社はありますので、その取り組みを注視していきたいと思います。お客様が直接価値を感じる言語のコミュニケーションだけでなく、画像や動画などの事例も重要ですし、今後はさらに進化していくと考えられます。現在は、自社で取り組んでいる会社もありますが、将来的には汎用的なプラットフォームが生まれる可能性もあると思います。そのため、情報をキャッチしながら、活用していけるように努力していきたいと考えています。

山崎氏)
二つのポイントがあると思います。まず、ステージに関して、技術動向を含めた検証は進行中ですが、正確性や情報の信頼性を確保することが課題です。これはエンドユーザーに対して適切に情報を提供するためのリスクとなります。日本の法律に準拠しつつ、この課題に取り組むことが必要です。また、日本の法体系の変化や考え方の変革が必要です。これによってブレイクスルーが生まれる可能性があります。
もう一つのポイントは、レッドフィンのウェブサイトに実装されているチャットインターフェースについてです。AIが生成するナチュラルなチャットインターフェースの実装が進むと予想されます。生成AIが解釈可能なプロダクトの開発が重要となります。このような技術的ポイントは、将来の動向を見据えた重要な部分となります。

城野氏)
私が最近注目しているのは、GOGENさんの例も含め、画像認識のOCRの進化です。海外の事例でも見られるように、画像から文字を認識したり物体を識別する技術の進歩が素晴らしいと感じます。これによって新たな価値が生まれる可能性も高いです。ただ、当面は、業務効率化の観点で大きなメリットがあると考えており、まずはそこから入り、データやノウハウを蓄積しながら、新たな価値の創造やビジネスモデルの構築が進んでいくのではと思います。

 

最後に、皆さんから一言ずつお願いします。この生成AIの領域においての課題についていくつか触れましたが、解決すべき点や取り組むべき課題について、行政や業界に向けてのアピールをお願いします。

和田氏)
話題は言語処理能力やタスク処理能力の向上と、今後の見通しについてですね。人間と機械の代替性について、機械には誤りを認めない風潮がありますが、人間も誤りを犯します。精度面では、今年や来年にはレベルが上がるでしょう。人間の代替を考える際に、より寛容なアプローチや法改正が必要だと感じます。

山崎氏)
そうですね、法の改正はもちろん重要ですが、未来に向けての業界の取り組みも考える必要があります。リスクを理解しながら挑戦するマインドセットを業界全体で共有することは、業界の発展につながると考えますし、法の改正にも影響を与えます。このような観点から、課題と提言を述べることが重要だと感じています。

城野氏)
日本の社会全体で、AIに触れることで、AIが怖いものではなく、生活がより楽になったり便利になったりするものだという意識が広がり、AIに寛容な社会になることを期待しています。

 

 


 

ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
次回のイベントは6月19日開催業界マップ部会のカテゴリーは【ローン・保証、マッチング】です。
皆さまのご参加お待ちしております。

 

 

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