【イベントレポート】第26回ビジネスマッチング部会「不動産クラウドファンディング協会コラボイベント」
第26回ビジネスマッチング部会が開催されました。今回は不動産クラウドファンディング協会コラボイベントと題し、不動産クラウドファンディングアワード2024の表彰、各社10分前後でプレゼンテーションをいただいた後は、20分間のパネルディスカッションを実施しました。オンライン参加も可能ですが、原則としてリアルな参加者の声を優先しています。
イベントの一部をご紹介いたします。
不動産クラウドファンディングアワードの発表!
「不動産クラウドファンディング・オブ・ザ・イヤー」の結果を当日発表いたしました。このイベントは、不動産クラウドファンディング事業を運営する株式会社レプスが主催し、多くのユーザーの支持を集めたファンドやサービスを称える場として開催されました。本イベントの最大の特徴は、単なる利回りや運用期間といった数値面の評価だけでなく、サービスの魅力や社会的意義にも注目している点です。クラウドファンディングの可能性を広げるべく、こうしたイベントが実施されることは非常に意義深いといえます。
初開催となる今回は、審査員による厳正な評価を基に、対象ファンドや特別賞、そしてベストファンド賞が選定されました。審査プロセスは透明性を確保するため、これまでに運用されたファンドの実績や集計データを基に慎重に進められました。評価基準には、ユーザーからの支持、リターンの実績、運用内容の安定性、そして社会的影響力が含まれており、さまざまな側面から総合的に評価が行われました。
具体的には、今回の「安定性・透明性部門」では、ユーザーに価値提供が高かったファンドが選出されました。一方、「社会貢献性部門」では、社会貢献や課題解決に対する貢献が高く評価されたプロジェクトが表彰されました。
大賞では、保育園を対象としたファンドで社会貢献性があることが評価されたファンドが表彰されました。
ファンド名:ミラッツ市川宮久保保育園
サービス名:creal
ノミネートされたファンドの一覧は、投資家からも高い関心を集めました。これらのファンドは、それぞれ異なる運用戦略や投資モデルを持ち、ユニークな魅力を発揮しています。
審査員からのコメントや評価結果の詳細は公式ウェブサイトで公開されています。関心を持たれた方は、ぜひご覧ください。
https://futokuho.jp/lp/awards2024/winner.html
第1部 各社プレゼンテーション
株式会社不二興産 尾崎様
株式会社不二興産は、2000年に設立され、名古屋市に本社を構える企業です。設立当初より、不動産の売買や管理、仲介業務などを手掛け、地域に根ざした事業展開を行っています。特に近年では、新たな事業領域として不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディング事業にも注力しており、多くの注目を集めています。
「SOLS(ソルス)」が掲げる理念は「すべての人に不動産投資の機会を」というものです。従来、不動産投資は高額な資金が必要で、多くの人にとってハードルが高いものでした。この課題を解決すべく、不二興産は誰もが気軽に不動産投資を体験し、その成果を実感できる環境を提供しています。
「SOLS(ソルス)」は、投資家に新しい形の不動産投資を提案するものです。具体的には以下の3つの商品ラインアップがあります。
- 匿名組合型商品
従来から知られている形式で、不動産特定共同事業に基づいた投資商品です。現在までに9件の案件を展開しており、市場の反応を見ながら柔軟に運用を進めています。
- 任意組合型商品
クラウドファンディング形式で資金を集めるタイプの商品です。「SOLS α(ソルスアルファ)」というブランド名で展開され、まだ1件の案件ですが、さらなる展開が期待されています。
- 出入れ自由型商品
「SOLS WALLET(ソルスウォレット)」と呼ばれる新しい商品で、投資家が自由に投資対象物件を選び、タイミングに応じて投資や解約ができる仕組みです。地域やアセットタイプの分散を図ることで、投資リスクの軽減を目指しています。
これらの商品は、地域や物件タイプを分散させることでリスクを抑えつつ、投資家に安定的な収益を提供することを目的としています。また、年1回の配当方式を採用することで、運営側と投資家の双方にとって利便性を確保しています。
現在、不二興産は対象物件の組み替え型商品のさらなる拡大を目指し、10億円規模の案件を順次展開予定です。これにより、多くの投資家が不動産投資を通じて資産形成に取り組む機会を提供することを目指しています。
同社の事業は、地域に根ざしつつ、全国規模での事業展開を視野に入れています。不動産投資が特定の層だけでなく、より多くの人々にとって身近なものとなるよう、不二興産はこれからも革新的なサービスを提供し続けます。
今後も地域と投資家をつなぐ架け橋となり、さらなる挑戦を続けていきます。
株式会社みらいアセット 加藤様
株式会社みらいアセットは2003年に設立し、名古屋市を拠点として、人と企業のみらいを幸せにするというミッションを掲げて活動しています。もともと経営コンサルタント業を中心に展開していた同社は、徐々に不動産関連事業に進出し、現在ではクラウドファンディング型不動産投資事業を主力としています。この事業は、地域経済の活性化を目指すとともに、個人投資家が資産形成の機会を得られるよう工夫されています。
同社が運営するクラウドファンディングプラットフォーム「みらファン」は、2022年に電子取引の許可を取得し、本格的にスタートしました。経営コンサルタント業としてのノウハウを生かし、このプラットフォームを通じて、地方企業が保有する不動産の収益化や流動化を図る一方で、投資家に対して少額から始められる不動産投資の機会を提供しています。これまでに13本の商品をリリースしており、地方の企業と投資家を結ぶ役割を果たしています。
みらいアセットが提供する不動産クラウドファンディングは、地域性や不動産の種類、オリジネーターの希望に応じた柔軟な投資機会を生み出す点が特徴です。また、投資初心者にとっても、少額投資からスタートできる点で、不動産投資への理解を深めるきっかけとなっています。たとえば、地方のコンテナホテル事業を支援する案件では、観光地の魅力を高めるとともに、地元経済やBCP強化への貢献を目指しています。このようなプロジェクトを通じて、地方と都市、企業と投資家の架け橋としての機能を強化しています。
また、投資家が安心して利用できるよう、対象となる不動産やプロジェクトの選定には高い透明性を確保しています。インカムゲインを中心とした商品設計による収益性の確保を重視するとともに、投資の仕組みを簡潔かつわかりやすく設計し、柔軟かつ安定した投資環境を提供しています。
みらいアセットが目指すのは、地方で活動する企業や人々と、その取り組みを応援したい投資家と結びつけることです。地域に眠る事業の価値を不動産を通じて引き出し、地方と都市の格差を埋める役割を果たすとともに、地方企業を投資家の皆さんと応援することで日本全体の経済基盤を支える存在であり続けることを目標としています。
今後も、「みらファン」を活用した新しいプロジェクトの提案を進め、地域社会の活性化と持続可能な成長に向けた取り組みを強化していきます。地方と都市の連携を深め、投資家にとっても価値のある機会を提供することで、日本経済のさらなる発展に寄与してまいります。
株式会社LEVECHY 高様
株式会社LEVECHYは、2012年に設立され、不動産再生事業を中心に多岐にわたる事業を展開しています。同社の理念は「不動産と金融の民主化」であり、誰もが投資家として活躍できる場を創出することを目指しています。創業当初はオフィス賃貸仲介事業を手掛けていましたが、現在では不動産再生を基盤とした事業開発やクラウドファンディング型の投資事業に注力しています。
福岡に支店を持ち、地方の金融都市としてのポテンシャルを活かしながら、外資系企業やスタートアップ企業と連携し、地域活性化に寄与する取り組みを展開しています。さらに、スポーツチームや地域プロジェクトへの支援を通じ、地域社会への貢献にも積極的です。このような活動により、地方と都市の双方で価値を生み出す企業としての地位を確立しています。
LEVECHYが提供する投資商品は、不動産再生を基盤に設計され、投資家に安定した利回りを提供しています。一般的な不動産投資商品が数パーセントのリターンにとどまる中、同社の商品は6%から10%を目指した設計となっており、多くの個人投資家が少額から投資を始められる環境を整えています。
同社のクラウドファンディング事業は累計応募金額が160億円を超え、運用資産残高は約98億円(2024年12月時点)に達しています。これまでに14本(2024年12月時点)の商品をリリースし、短期運用を中心に行いながら、将来的には中長期の投資商品にも拡大する計画を立てています。
具体的な取り組みの一例として、宮古島での住宅開発プロジェクトがあります。急速に進むホテル開発に対し、職人住宅や従業員住宅といった不足するニーズを補完する形で不動産投資を展開しており、年間利回り8%を目指した投資機会を提供しています。このプロジェクトは地域の社会的課題を解決しつつ、投資家にも魅力的な収益をもたらしています。
さらに、LEVECHYはメディアへの露出や社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。投資のたびに寄付を行う仕組みを取り入れるなど、投資家が社会貢献を実感できる取り組みを推進しています。同社は「投資を通じて社会と投資家をつなぐ」という役割を果たしながら、より多くの人々にとって価値ある投資機会を創出し続けています。
第2部 パネルディスカッション
−金利上昇局面ではクラウドファンディングの魅力が相対的に低下するため、資金が集まりにくくなるのではないでしょうか?
高氏)
現状の金利水準では大きな問題はないと考えています。ただ、仮に預金金利が5%に達するような時代になれば、その影響は確かに出てくる可能性があります。
加藤氏)
金利が急上昇する局面では、一般的な金融商品や不動産の利回りも上昇するため、クラウドファンディングが競争力を保つのは難しくなるかもしれません。商品の利回りには一定の余裕を持たせており、マーケティングの工夫によって集客を図っています。ただし、金利上昇に連動して利回りを変更する設計ではないため、現状の金利上昇の影響を完全に無視することはできません。
−各社いろんなスキームを考えられておられますが、法的にやりにくい部分や変えたいところはあるか?
高氏)
法的な制約が事業展開に影響を及ぼす場面が多々あります。特に、リノベーションは不動産価格の10%までという規制が存在し、この要件を満たすことが、しばしば大きな課題となります。そのため、当社では直接的に資金を集め、効率的に活用できる仕組みを模索しています。
加藤氏)
現状では、優先投資家とそれ以外の投資家間で利回りの違いを設けるなどの柔軟な設計ができず、この点が資金調達の効率性に影響を与えています。理想的には、リスクに応じた利回りの設定が可能であれば、より多くの投資家を集めることができると考えていますが、法的制約がそれを阻んでいます。このような制約に対応するため、別の監督体制を整える必要があるかもしれません。
−募集金額はすぐに集まるものでしょうか?時間がかかってしまった事例などもあるのでしょうか?
高氏)
以前に実施した24か月で年利6%の案件では、反応があまり良くなく、資金が集まるのにかなり時間がかかりました。最終的には募集終了までに1か月を要したケースもあります。そのため、12〜18ヶ月程度の運用期間の設定が適していると感じています。投資家の方が12か月ごとに新たな選択をするスタイルが一般的な背景もあるため、このような期間で設計したほうがうまくいきます。
加藤氏)
2年前の初期段階では募集がスムーズに進みましたが、最近ではそう簡単にはいきません。現在は周囲の状況を考慮しながら試行錯誤を繰り返しているところです。特に12か月を超える期間の案件は資金が集まりにくい傾向が強く、一つの大きな課題となっています。
尾崎氏)
通常の匿名組合型案件でも、すぐに資金が集まらない場合があります。特に外国投資家が中心となるビジネスモデルでは、エグジット型と呼ばれる2年や1年半といった期間の案件が主体となっていますが、期間の長さが原因で資金調達に苦労することがあります。 そのため、期間を短縮したり、利回りを上げたりするなどの工夫をしています。 投資家の間では、利回りよりも期間の短さが重視される傾向があります。具体的には、1年を超える案件は「長すぎる」とみなされる場合が多いです。
横田氏)
たとえば、令和島の案件では、エグジット(出口戦略)が決まっている2~3か月の短期間の案件を試験的に実施しました。この場合、利回りが2~3%程度でしたが、募集は非常にスムーズで短期間で資金が集まりました。このように、日本国内では案件の期間が投資家の決定に大きく影響していると感じます。
−Amazonギフトカードで集客しているクラファン業界の市況どう思いますか?
高氏)
こういった形で取り組むことにあまり乗り気ではないのですが、現在の当社の状況では、いわゆる「固定利回り」の設計を取る以外に選択肢がありません。そのため、理想的には柔軟な設計を取り入れたいと思っていますが、現時点では実現が難しい状態です。
加藤氏)
弊社では商品の安全性に配慮して、特に収益物件では「インカム」中心の設計をしているので、「インカム」部分から逸脱するような高金利を設定することができません。結果として、サービス内容が制限され、「プレゼント」で資金を集める形式にならざるを得ないのが現状です。
尾崎氏)
投資家にとって魅力的な仕組みや価値を付加することは重要です。特に、何か特別なポイントや、投資家が「これならやってみよう」と思える付加価値を提供することで、投資の意思決定を後押しする必要があります。しかし、こうした付加価値がなければ、逆に投資を敬遠される可能性もあるのではと考えています。
ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました
皆さまの会場でのご参加お待ちしております。