【イベントレポート】第20回ビジネスマッチング部会「リビングテック特集」

2024.05.22UP

第20回ビジネスマッチング部会が開催されました。今回はリビングテック特集と題し、リビングテック協会様とコラボレーション企画させていただきました。アクセルラボ様に基調講演いただいた後、各社10分前後でプレゼンテーションを発表していただきました。また、20分間のパネルディスカッションを実施しました。オンライン参加も可能ですが、原則としてリアルな参加者の声を優先しています。

イベントの一部をご紹介いたします。

第1部 各社プレゼンテーション

基調講演:アクセルラボ 青木様

株式会社アクセルラボの青木です。当社はスマートホームサービスを専門に提供しており、設立から8 年が経ちます。私自身は2015 年からスマート業界に携わり、約9 年間の経験があります。
本日は、CES2024 におけるスマートホームの最新動向に焦点を当て、多様化、オープン化、そしてソリューション化の三つのキーワードを取り上げます。まず、CES についてかるくご説明します。CES は、毎年一月にラスベガスで開催される世界最大のテクノロジー見本市です。世界各国の最先端プロジェクトが紹介される大規模イベントです。昨年からリアル開催が再開され、今年はほぼコロナ前の規模に戻ったと言われています。CES のスマートホームエリアは、近年ますます注目を集めています。

今年のCES のスマートホームエリアの特徴として挙げられるのが、スマートホームが多様化してきたことです。展示領域が大幅に拡大し、メインエリアの半分程度がスマートホームエリアになりました。この拡大の大きな要因は、スマートホームとしてカテゴライズされる範囲が広がったことです。照明器具や空調、鍵、センサーなどのデバイスだけでなく、シェードやオーブン、調理器具など、さまざまな家庭用品がインターネットに接続され、スマートホームエリアに集約されて展示されています。さらに、家電や住宅設備以外にも、マッサージチェアや健康器具、プールメンテナンスや庭の手入れの機器まで、すべてがインターネットに接続され、スマートホームエリアに展示されています。蓄電池の展示も多く見られ、ほぼすべてがインターネットに接続され、外部から見えるか操作可能な状況で展示されていました。

この流れから、日本でも同様の動きが予想されます。従来はインターネットに接続されないものが多かったインターホンやシャッターなども、インターネットに接続されることでスマートホームの一部として扱われるようになるでしょう。
続いては、スマートホームのオープン化です。昨年に比べて、Matter (マター)対応の普及が顕著で、ほぼ全てのスマートホームサービスでMatter 対応が進んでいることが確認されました。多くの企業がMatter 対応に向けた開発を進め、市場のニーズに応じて製品を提供可能な状態になっています。Matter について簡単に説明しますと、スマートホームの共通規格であり、様々なスマートデバイスやサービスを統一して操作できるようにするものです。この共通規格により、従来の複雑な機器選択や設定の問題が解消されるため、市場に大きな期待が寄せられています。

日本ではまだMatter の採用が進んでいるとは言い難い状況ですが、海外のベンダーではすでに当たり前のように対応されており、日本でも美和ロック社がMatter 対応のサービスを発表いたしました。展示ではSamsung が特に印象的でした。Samsung は独自のスマートホームプラットフォームであるSmartThings を持ち、数百のデバイスを接続し操作可能にしています。また、Samsungは同業のLGと も統一規格で相互連携を進めるなど、オープンなスマートホームをリードしている存在として注目されています。

最後に、スマートホームのソリューション化についてですが、これまではホームセキュリティやエネルギー管理などが提案されてきましたが、今回はさらに多くのブースで生活課題解決型の提案が見られ、その動きが加速していることを感じました。
今やスマートホームは便利な家電操作の枠を超え、高齢者ケアやセキュリティ、エネルギー管理から健康管理やペットケアまで、様々な領域で活用されています。特に家内外をつなぐソリューションが注目され、ヘルスケアやペットケアなど外部サービスとの連携が強化されています。Amazon のブースでは医療や介護分野向けのソリューションが紹介され、これらのサービスは日本でも提供が開始され、賃貸管理や外国人入居者向けのコミュニケーションなど、不動産管理業務に活用される可能性が示唆されました。

以上、CES 2024 スマートホームの最新動向について事例を交えてお伝えさせていただきました 。

 

LIXIL 倉林様

当社は建材住宅メーカーで、玄関ドア、窓、トイレ、浴室など様々な商品を取り扱っていますが、現在はリクシルのさまざまな商品がつながるIoT製品も展開しています。100年の歴史と世界で10億人のユーザーを持ち、日本では8割のシェアを誇っています。私たちの部署は、商品の企画から販促までを一貫して行っており、市場のニーズに対応し新商品を生み出すことに注力しています。
主力商品は,家の性能を向上させ健康で快適な生活を実現する家のハードウェア(建材・住宅設備)です。ハードウェアだけでなく、家のソフトウェア(スマートホームシステム)も重視し、顧客の幸せな生活を実現することが私たちの使命です。

日本でスマートホームの普及が進まない理由には、いくつかの要因が考えられます。まず、高額な費用や料金がユーザーにとってハードルとなっています。また、工事や設定が複雑で手間がかかるという認識もあります。さらに、操作が難しいと感じるユーザーもいます。これらの課題に対処するために、私たちは安価な商品を提供しています。月額使用料無料で、定価が5万円の商品を展開しています。また、一般のユーザーが簡単に設定できるように設計され、マニュアルを見なくてもUIUXが分かりやすくなっています。また、製品が安くて簡単に使えるだけでなく、安心・安全・快適さが重視されています。

製品は定期的なアップデートを行い、スマートホームと建材住設の両方を最適な開発ができることが私どもの強みです。これにより、製品は常に最新のニーズに対応し、顧客に信頼と満足を提供できます。
また取り組みの一例として、長崎市と地元の有力企業との協働活動である住みよかプロジェクトを紹介します。このプロジェクトは、子育て世代を対象に、断熱リフォームとIoTリフォームで断熱性と利便性を兼ね備えた住戸を提供し、若い世代が住みやすい住環境と街づくりの活動を行っています。

他にもIoT実験住宅を活用して共創を促進し、顧客にスマートホームを体験して頂く取り組みも行ってます。私たちは、「これからの住まいの人・モノ情報が繋がることで、より便利で安心な暮らしを実現する」という目標に向けて活動を継続しています。

 

Panasonic 井上様

私はパナソニックのサービスクリエーションセンターという組織に所属をしています。本日は、不動産テック協会の皆様とのコラボレーションの可能性についても触れさせていただきます。
始めに、自己紹介をさせてください。パナソニックはホールディングスの体制を取っており、私たちのサービスクリエーションセンターは3年前に設立されました。私たちの事業部では、松下幸之助創業者が世に送り出した配線機器、そこから派生するコンセント、スイッチなどの電設資材から、最新のIoTに連携するデバイス、EV充電器まで、様々な商品を扱っております。直近では、商品(ハード)の開発製造販売だけではなく、サービスの領域にチャレンジすべく、我々のセンターが立ち上がっております。2020年、コロナ禍で立ち上がった部門ですが、最初は数十ものアイデアを検討し、自社の強みが生きるマンション市場に焦点を絞り、「モバカン」というDXサービスを提供しました。さらに、昨年には「まちベル」という新しいサービスをリリースしました。

これらのサービスは、パナソニックの高いインターホンシェアを活かしてサービスをリリースしております。また、インターホンは、来客応対だけではなく、宅配ロッカーとの連携、無線通信や音声認識、スマートフォン連携など、進化し続けており、今後はブラウザ付き(インターネット機能付)が主流となっていく中で、様々なサービスと繋いでいく構想を進めております。

本日は、当社で積極的に進めているアクセレータープログラムについても、紹介したいと思います。本プログラムは、スタートアップ企業様を支援しながら、Panasonicとの協業を模索する活動になります。例えば、家電のサブスクリプションを提供するスタートアップ企業ピーステックラボ様と共同で、当社のサービス「まちベル」を通じて顧客のニーズを検証し、実際に受注に結びつけることができました。この実証から、さらに協業を深めるべく、継続的な連携を模索しています。

今後もさらに多くの企業と提携し、未来の生活に貢献するサービスを共同で開発していきたいと考えています。また、当社の製品は国内にとどまらずグローバルに展開しており、特にインドやベトナム、タイ、トルコなどでは、トップシェアを誇っています。ですので、近い未来、サービス事業は国内のみならず、海外での展開も模索しており、これらの活動でも、皆様との連携がとれたら嬉しく思います。

 

第2部 パネルディスカッション 

今後スマートホームが伸びる領域はどこになりますか?

青木氏)
ペット需要は確実に伸びています。ペットを飼っている方は、スマートホームも導入することが一般的になってきています。そのため、今後はペット需要がさらに拡大すると考えられます。また、賃貸物件では、人手不足のDX 化をしたいという情報も多くいただいています。今後、Amazonさんとの連携により、DX 需要がますます拡大していくのかなと思います。

 

━日本でスマートホームが進まなかった理由と、今後進まない可能性について知りたいです。暮らしの「課題」を解決するという話題がありましたが、例えば30 代半ばで新築戸建てを購入する人にとって、生活における課題は何があるでしょうか?

井上氏)
日本独特の商流があるのかなということと、意外と先進国の成功例みたいなところがないと難しいのかなと。日本人はディフェンシブな国民性が強いのかな、なんてことを少し考えます。

倉林氏)
建材メーカーですので、家に入るものは皆さんも大体イメージされていると思いますが、なかなか新しいものが入りにくいものですね。特に住宅業界は古いしきたり的なものもあり、こうした部分が進まないところがありますね。

 

 

スマートホーム化によって住人に経済的なメリットを提供できる例は何でしょうか?

倉林氏)
やはり、まずは省エネですね。電気代が高騰している今、省エネは少なからずあると思います。

 

━祖母が住む遠く離れた地で、スマートホームを使ってもらいたいのですが、アナログな人です。スマートホームの便利さを説明するにはどうすれば良いでしょうか?

青木氏)
遠く離れた親御さんが使う場合、やはり見守り用途で利用されることが考えられますね。一度帰省してセットアップを一緒に行うことで、遠くからトイレに行っているかなどを見守ることができます。そういう使い方は良いと思います。

 

━スマートホームの普及を加速させるために必要なポイントをひとつ挙げるとしたら、何を挙げますか?

井上氏)
思いつきのアイデアですが、スマートホームの普及を考える際に、高齢の方々がどのように進められるかが重要だと思います。親世代にも受け入れられやすい機能やサービスがあれば、普及が促進されるのではないでしょうか。例えば、子供世代から親世代に向けて、「こんな機能があるから、このデバイスを置いてみたい」と感じさせるようなサービスがあれば、普及がより進むかもしれません。

倉林氏)
私たちは、体験を大切にすることが重要だと考えています。例えば夏の初めの頃は電気代が高く、エアコンをなかなかつけないお年寄りが熱中症になるケースが多く報道されます。そのような場面で、自動的に温度を測定してエアコンを制御することがスマートホームでは当たり前になっています。また、お風呂も自動的に洗浄する機能があります。身体の負担が減りますよとこうした提案をすると、喜ばれます。

青木氏)
アクセルラボは BtoBtoC でビジネスを行っていて、主に住宅メーカー様にスマートホームの導入を支援していただいています。その中で最も大きな問題は工事や設定に関連するトラブルです。工期の延長や設定の不具合により現場でクレームが発生し、標準作業ができないと判断されることがあります。ですので、工事や設定に関連するトラブルを解消し、広く普及させることが重要だと考えています。この課題は業界全体で共有されており、各社が異なるアプローチを取っています。我々は昨年、IoTデバイスの設置と設定を専門で行う子会社を設立しました。この会社は他社ブランドやサービスの設置やサポートを請け負い、日本のスマートホームの設置と設定に関する障壁を取り除くことを目指しています。

 


 

ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
次回のイベントは6月13日開催のビジネスマッチング部会【オフィステック特集】です。
皆さまの会場でのご参加お待ちしております。

 

 

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