【イベントレポート】第18回ビジネスマッチング部会「国土交通省DAY」

2024.03.05UP

18回ビジネスマッチング部会を「国土交通省DAY」と題し、2月8日に開催されました。
この部会では、通常は不動産会社と不動産テック企業の情報交換やビジネスマッチングが主な目的ですが、今回の第一部では矢吹周平様(政策統括官付情報活用推進課・課長)、第二部では二井俊充様(政策統括官付不動産市場整備課・課長)にプレゼンテーションをしていただき、その後パネルディスカッションおよび会場の皆さまからの質疑応答を実施しました。
オンライン参加も可能ですが、原則としてリアルな参加者の声を優先しています。

 

1部 国土交通省 政策統括官付情報活用推進課・課長 矢吹様のプレゼンテーション

生産性向上・労働力不足などが、我が国の直面する課題ですが、我が国の生産性はG7諸国の中でも低い水準にあります。また、将来的には人口減少が進行し、労働力不足が深刻化する見込みであり、このことが生産性向上の妨げとなる可能性が高いです。例えば当たり前に提供されていたデイサービスの利用回数が減少するなど、労働力の供給が減ることで、受けられていたサービスが提供されなくなる社会が懸念されます。

このような状況を乗り越えるため、デジタル技術の活用が重要であり、データを機械処理し業務を効率化することで生産性を向上させることができます。それがデジタル変革(DX)の真の意味であると思います。政府や民間企業がデータを活用し、新たなビジネスやサービスの展開をする社会の実現を目指す必要があります。

政府の取り組みとして、地理空間情報や統計データなどをオープンデータ化することで、様々な分野で活用が広がります。データの利活用を促進するためには、専門家や研究者だけでなく一般の利用者が利用しやすい形式にすることや、役所と利用者とのコミュニケーションを強化することが必要です。

また、統計政府では、宿泊統計などのデータを地図に活かす方法を考えています。自治体では、人流データを使いやすくする取り組みを進めています。さらに、不動産に関係する情報として、ハザードマップ情報や公共施設の情報などをウェブ上で提供する「不動産情報ライブラリ」というシステムを4月にオープンする予定です。掲載情報をシステム上で取り込めるようにAPIで連携できるようにする計画もあります。データを使いやすくし、オープンに提供するための取り組みを進める中で、皆さんからの意見や気付きも取り入れながら進めていきます。

 

2部 国土交通省 政策統括官付不動産市場整備課・課長 二井様のプレゼンテーション

不動産IDは、不動産業界のDX化を推進する取り組みとしてスタートした施策です。通常、不動産情報を連携させる際には住所が使用されますが、住所の表記ゆれによってデータの紐付けが困難な場合があります。不動産IDは、不動産ごとに固有の番号を付与することでこの問題を解決し、データ連携を可能にします。

不動産IDの実装により、物流業界でも有用性が見出されています。荷物配達時の住所の表記ゆれは実際に多く、配達員が正しい住所を確認するまで時間がかかることが課題です。不動産IDを使用すれば、荷物受け付け時に住所を正確に修正し、作業効率と配達の精度を向上させることができます。

災害対応においても、不動産IDは有用です。把握した被災状況を行政と損害保険会社で情報共有できれば効率化が進みますが、表記ゆれで情報連携できないことがあります。不動産IDを活用すれば、情報の一元化が図られ、罹災証明の発行などが迅速化されると期待されます。他には、引っ越し時の手続きの簡素化も期待されます。不動産IDの導入により、電気、ガス、水道など異なる事業者間の手続きの一括化が可能となります。

不動産IDへの期待は広がっており、現在は不動産IDの実現に向けた様々な実証事業を進行中です。ただし、課題も存在します。現在、不動産IDは登記の不動産番号を基に生成していますが、例えば、登記に掲載の地番と建物の住所との齟齬や未登記建物の存在などが挙げられます。今後、実証事業の結果も踏まえ、これらの課題解決に向けた改善方策の検討を進めていきます。不動産IDの実用化に向けて解決すべき課題はまだありますが、よい施策になるようしっかり努力していきます。

 

3部 パネルディスカッション 
来場された方からの質問に答えていただきました。

 

Q.今日はなぜ来てくれたのですか

A.先ほど申し上げた国土数値情報は、非常に重要な基盤情報なのですが、ユーザーの顔が見えないことが課題でした。民間企業では、自社が提供するサービスの利用者に直接顔を合わせることができるため、フィードバックを得ながらサービスを改善する機会があります。このようなアプローチによって、不足している部分を把握し、改善していくことが可能です。しかし、公共部門ではこの点が弱みとなっていました。そのため、滝沢さんに出会った際、この問題を共有し、様々な立場からの意見を求められる本日の会は有益だと考えました。

Q.不動産ID今のところの所感はどうですか?

A.不動産IDの実現に向けてまだまだ課題が多いように聞こえたかもしれません。不動産IDについて以前からアイディア自体は存在していましたが、今回、制度整備に初めて着手しました。実際に着手したことで、不動産IDが不動産業界のみならず、世の中に広く役に立つ施策であることが明らかになりました。その一方で、課題となる事項もクリアになってきました。これらの中には、当初は想像が及んでいなかったものもあります。実際に着手したことで、これらの外延が明確になったことは大きな成果だと思ってます。いずれの課題も解決可能なものであると考えていますが、現在進めている実証事業が終わった後に検証を行い、改善方策を講じていきたいと思います。トライ&エラーで有用な制度となるよう整備していきます。

Q.不動産IDは完全な状態にならないとリリースされないのでしょうか

A.地番・住所など不動産の世界はとても複雑なので100%の完璧さを求めることは難しいと私は考えています。しかし、不動産IDが便利なものだと皆さんに感じていただけるようにある程度の完成度を追求することは重要だと思っています。そのうえで、不動産IDが市民権を得ることが前提となりますが、不動産IDだけでは解決できない点については、逆に世の中に合わせてほしい部分も出てくると思います。当初から完璧な状態まで到達することを目指しているわけではありませんが、便利だと感じていただけるような段階に至ることを目指しています。

Q 空き家問題について、不動産IDの活用方法などを思い浮かぶことがあれば、参考で伺いたいです。

A.空き家対策に取り組む際、自治体はまず空き家の位置を把握することが非常に困難です。実際の状況把握において、職員は外観調査を行い、空き家の特定を試みます。ただし、外観調査だけでは不十分であり、例えば水道の利用状況などのデータを活用することで、空き家の特定が可能となります。ここで不動産IDを活用して、自治体が保有する台帳データと水道の利用状況を組み合わせることで、空き家を特定するプロセスが効率化されます。また、当初から、水道データと自治体の台帳データを統合することができれば、現地調査の範囲が狭められ、空き家の特定が容易化することも期待されます。また、マッピングを行うことで、空き家の位置を視覚化することも可能です。これらの取り組みは、現在、実証事業としても取り組みが進められています。

 

最後に民間企業の皆さんに向けて一言

矢吹氏:皆さんに期待することは、自分のリスクと責任で事業をすることです。民間ならではの取り組みであり、そこでイノベーションが生まれ、新しいサービスが登場することが、役割であると思います。そういう社会であり続ける必要があると思います。私としては、今日の場も含めて意見が欲しいというのが一番の願いです。応援してほしいなとも思いますが、データを使っている立場から、指摘や改善点もありがたいです。応援の意見も、厳しい批判の意見も、同じ価値があると思っていますので、意見が欲しいです。皆さんとコミュニケーションを取り続けられると嬉しいです。

二井氏:旧来に比べて、霞ヶ関は民間事業者との情報交換の機会が減ってきているように感じることもあり、皆さんからの様々な声を受け取ることは非常にありがたいです。行政にアプローチをするのは少し気が引けるように感じられるかもしれませんが、実際にアプローチすると意外と気軽に意見交換できるものだと思います。何か伝えたいことがあれば、気軽に連絡してください。皆さんにとっても、お役に立つことがあれば嬉しいです。

 


 

今回のイベントには多くの方が会場に来てくださいました。
ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
次回のイベントは3月14日開催の【不動産会社CVC特集】です。
皆さまのご参加お待ちしております。

 

 

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